カツリ、カツリと靴音を鳴らし、スザクは不機嫌な顔のまま廊下を歩いていた。
ビスマルクの話では、電話をかけても部屋をノックしても、中にいるはずのルルーシュの反応がないのだという。そのため、スザクに中を確認するようにと、お願いという名の命令を賜ったわけだ。・・・なんて迷惑な命令だと思わず舌打ちをした。
自分で確認すればいいじゃないかと言いたかったが、ジノとアーニャもそばにいたため、理由を尋ねることも拒否することもできず、言われるがままルルーシュのもとへと足を進めていた。
ビスマルクに教えられた場所は、皇宮の奥。皇帝の居住区にほど近い場所だった。
ここに至るまで厳重な警備がされており、とてもラウンズの居住区とは思えず、場所を間違えたかと最初は思ったほどだった。だが、よくよく考えればルルーシュは皇子なのだ。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。それが本来の彼の名前なのだから、このぐらいの警備は当然なのかもしれない。
ユフィを殺した大罪人が、手厚く守られているなんてと思わず眉を寄せた。
こんな豪華な宮殿、犯罪者が住むような場所ではない。
彼が住むべき場所は地下牢であって、こんなに明るくきれいな場所ではない。
なんで、こんな場所に。
いら立ちが顔に出ているせいか、通りすがる人はみな触らぬ神に祟りなしと遠巻きにこちらを見ていた。普段なら嫌味をわざと聞こえるように言ってくる衛兵でさえ口を閉ざしこちらを見ていた。やがて、教えられた部屋の前にたどり着き、大きなその扉を思わずにらみつけた。
ビスマルクに渡されたカードキーをポケットから出す。
入らなければいけないのか、顔を合わせなければならないのか。
殴らずに、怒鳴らずにいられるだろうか、自分は。
ルルーシュの態度次第ではどうなるか・・・自信はない。
意を決し、カードをスロットルに通すと、認証を示す緑のランプが点灯した。ノックをすべきか迷ったが、返事がないからこちらに振ってきたのだからと、ノックはせずに扉を開くと広い執務室に通じていた。威圧感のある大きな机と、本棚、そして大きな窓。皇子にはふさわしいのだろうが、犯罪者には分不相応な品々にいら立ちが募る。ここにはいないなと部屋を見回すと、奥に扉が見えた。
扉の向こうは広いリビング。いったい何部屋あるのだろう。皇宮なのだから、部屋が広く豪華なのはわかっていたが、ここまでとは。部屋に足を踏み入れると毛足の長い絨毯が足に絡みつき、音を完全に消し去っていた。調度品はどれもこれも素晴らしいものだった。彼のためにあつらえたのか、もともとここにあったのかは知らないが、なんでこんなに豪華な部屋に住んでいるのだとますます眉が寄った。部屋から通じるほかの扉に手をかけると、浴室やトイレ、キッチン。そして、寝室があった。寝室はほかの部屋とは違いカーテンが光をさえぎっており、その部屋だけ薄暗かった。スイッチに手を伸ばし、明かりをつけると、キングサイズの天蓋付きのベッドがまず目に入った。
ベッドの上は盛り上がっており、まだそこに誰かがいることは明白だが、明かりがついてもその人物は微動だにしなかった。これだけ素晴らしいベッドで眠っていれば、深い眠りにもつけるだろう。ユフィのことも忘れ、惰眠をむさぼっているなんて。こちらは昨日その顔を見、その声を聴いたせいでろくに眠れなかったというのに。
カツカツとわざと靴音を鳴らし近づきたかったが、毛足の長いじゅうたんに阻まれる。こうなったら、乱暴に布団をはぎ取り、大声を出して起こそう。防音がそれなりにされているから、外に声が届くことはまずない。乱暴に体を揺り起こし、無理やり引き起こしてやろう。そのぐらいしても罰は当たらないはずだ。
それを実行するためにベッドの横に立ち、そこでわずかな違和感を感じた。随分と寝相がいいらしい、布団はほとんど乱れていなかった。それだけ熟睡しているということなのだろう。布団の中に頭もすっぽりと隠しているせいかこれだけ近づいても気配に気づくこともない。
思わず舌打ちをした後、乱暴に掛け布団をひきはがし、怒鳴りつけようとしたのだが、その言葉は喉の奥から出てくることはなかった。
***
私用ラウンズメンバーメモ(すぐ忘れる)
00:ジュリアス
01:ビスマルク
02:
03:ジノ
04:ドロテア
05:
06:アーニャ
07:スザク
08:
09:ノネット
10:ルキアーノ
11:
12:モニカ(インペリアルガード)